「米歴史研究者らの声明」に見る帝国的依存とメディア

 5月8日の「米歴史研究者らの声明」を読んだ。特に従軍慰安婦問題について、安倍首相に「大胆な行動をすること」を期待するという側面もある。しかし私が着目したのは、この声明が「日本の多くの勇気ある歴史家」によるアジアにおける第2次世界大戦の正確かつ公正な歴史の探求に「賛意」を示したものだという側面である。
 日本の日本史研究・学会の声明が朝日新聞で取り上げられたのは、筆者の記憶にあるのは、歴史学研究会や同時代史学会による、特定秘密保護法案の閣議決定への反対表明(2013年11月)の記事である。しかし、今月掲載されたアメリカの日本史研究者の見解と比べれば、明らかに割いている紙面は少ない。また、歴史学研究会は2014年10月に「政府首脳と一部マスメディアによる日本軍「慰安婦」問題についての不当な見解を批判する」という声明を発表している。しかし、当事者たる朝日新聞による言及は見当たらない。
 日本の歴史研究に対する、この朝日新聞の取り上げ方は、日本のアメリカへの帝国的依存を如実に示しているのではないか。アメリカの日本史研究には口を開かせるが日本の日本史研究には口を開かせない、そうした帝国的依存への共犯関係が朝日新聞に見て取れるのである。ただ、それは朝日新聞の問題というよりも、メディア全体の問題であろう。過度な報道自粛は、この共犯関係の隠蔽以外の何ものでもない。