「改憲派」への一回答

8月13日の朝日新聞「声」欄掲載の、鈴木博氏による「改憲派から護憲派への質問」を拝読した。以下、鈴木氏の議論に根本的な疑義を提示することで、私なりの回答としたい。
 ご投稿の質問①③については、「はい/いいえ」の二択に強制的に収斂し、自ずと改憲派に有利に働く質問の仕方である。②も下記の私の考えからすれば意味を成さない。したがって、①〜③はいずれも「抑止力」の機能を問うと見せかけて、著者の意図と無関係に、その実ある隠蔽が行われている。その隠蔽に関するのが、ご質問の前提である、「改憲か護憲か」という類型化である。自衛隊の活動を拡大(改憲)しようが縮小(護憲)しようが、アメリカ合衆国への植民地的従属関係を強化することにしかならないというのが、私の見解である。表面的な「改憲か護憲か」の議論からは、この植民地的従属関係は隠蔽される。この隠蔽は、例えば沖縄の在日米軍基地の強制を黙認するという形で具現化する。
 ゆえに、考察すべきは、「改憲か護憲か」ではなく、植民地的従属関係にどのように向き合うかではないか。この関係を変容させうるのが第九条であると、私は考えている。戦力の不保持は、近代国家の常識から逸している逸脱したものだが、だからこそ植民地的従属関係をも再考する契機となるのではないか。