「非国民よ、お国のために死ね」まであと一歩

 7月下旬に、戦争法案に反対する学生団体「SEALDs」に対して、「自己中心的だ」と述べた武藤貴也氏への批判が起こっている。武藤氏は「SEALDs」がだまされている情報を否定し、その根拠として「法案が成立しても戦争に行くことはなく」(『朝日新聞』2015年8月5日)と言うが、果たしてそうだろうか。
 彼のブログには「他国が侵略してきた時は、嫌でも自国を守るために戦わなければならない」(2015年8月3日「国民に課せられる正義の要請」)とある。明らかに日本が戦争に巻き込まれることを想定している。外交力がなければ、突発的な戦争に巻き込まれ、臨時案として徴兵制が整備され、恒常化することも考えられる。湯川遥菜さん、後藤健二さんを殺させてしまった現政権に、そうならない外交力は本当にあるのか。武藤氏の見解とは逆に、戦争法案は戦争へ巻き込まれないための最後のストッパーを外すことだと、私は考える。
 無論、私見は武藤氏からすれば「自己中心」、もっとはっきり言えば「非国民」と映るだろう。「嫌でも自国を守るために戦わなければならない」と述べる武藤氏の発言は、「非国民よ、お国のために死ね」という言葉までの重大なあと一歩である。現政権が、いや、主権者たる国民がこれから選択するのは、他国への先入観によらない合理的な外交力か、それとも非合理的な「非国民よ、お国のために死ね」か。