朝日新聞(2017年11月26日)「声」欄掲載文

新年早々、昨年の出来事で申し訳ありませんが、取り急ぎ、新聞版をお知らせします。原文との差異はほぼありません。

また、「改憲が戦争に直結するのか」という論理的飛躍の指摘は、私も妥当だとは思います。その点を再考するためにも書きました。



戦争の恐怖、想像力働かせる

 自民党改憲勢力への賛同が18〜29歳で多いことを危惧する投稿「特攻志願『お前たち馬鹿だ』」(9日)を拝読した。自己批判する機会を頂戴(ちょうだい)したことに感謝したい。返答になればと思い、私見を提示する次第である。

 私たちは戦争を直接は経験していない。戦争の恐怖を実感するには、想像力を働かせるしかない。私の経験でいえば、漫画「はだしのゲン」で想像力を培ったつもりである。原爆投下直後の人々の様子、皮膚が焼けただれ、ガラスが突き刺さり、眼球が飛び出し、ぞろぞろと歩き、バタバタと人が死んでいく。投下後も、髪が抜け、血便、吐血、そして死。中学生で読んだとき、私はこの場面で嘔吐(おうと)した。読書で嘔吐したのは、後にも先にもこれしかない。

 身体に影響が出るほどの戦争の恐怖。確かに嘔吐は苦痛である。だがその苦痛なくして戦争の恐怖を想像することは、私にはできなかった。戦争を描写したメディアは多くあるが、戦争の恐怖を描写したメディアに、私たちは触れる機会が少なかったように思う。特に教育の場では顕著である。そのことを見直すべきではないか。